【女らしさ・男らしさ】
 日本の高校生は女らしさ・男らしさを否定? 2006.4
  日本青少年研究所「高校生の生活と意識に関する調査」(2003年調査)





 ジェンダー・フリーが政治問題になっている。ジェンダー・フリーは女らしさや男らしさを否定するものだという批判である。そのように批判する人は、何が男らしさで、何が女らしさなのかを、はっきりさせてもらいたい。同じジェンダー・フリー批判論者でも、人によって様々だろうから。

 2004217日付の『読売新聞』社説は、 日本の高校生は「男は男らしく」「女は女らしく」といった意識が他の国より突出して低いと報じた。 その根拠は、日本青少年研究所などが、日本、アメリカ、中国、韓国の高校生を対象として行った「高校生の生活と意識に関する調査」である(2003年調査)。
 「新しい歴史教科書を作る会」のホームページでは、八木秀次が、この調査を取り上げて、次のように述べている。「日本の教育の異常さが国際比較によって明らかとなった」「これはジェンダーフリー教育などという性差を否定する教育を行政主導で行っている日本だけに見られる得意な現象である」「我が国の教育全体が他国と比べて特別に病んでいる」。
 これを受けてか、新聞に「男らしさ・女らしさを育てます」というような一面広告を出す私立学校も登場した。

 それで、この調査を読んでみた。以下は、「全くそう思う」「まあそう思う」の合計(問19−9)。

  女は女らしく 日本  男子38.9%  女子22.5% 
         米国  男子61.0%  女子55.5
         中国  男子75.9%  女子68.0
         韓国  男子 61.3 %  女子32.3
  男は男らしく 日本  男子49.2%  女子40.4%.
         米国  男子65.1%  女子62.4
         中国  男子83.0%  女子79.7
         韓国  男子67.4%  女子40.9

 確かに、日本は男女とも「らしくすべきだ」という意識は最も低い。中国がきわだって高く、アメリカも意外に高い。女らしさについては、日本の女子と韓国女子が否定的で、アメリカの女子は極めて肯定的である。男らしさについては、中国男女がとくに高い。
 だが、何が「女らしさ・男らしさ」なのかが問題である。その中身によって、「らしくすべきだ」という意識も違ってくるのだから。この調査では、20項目について、女らしさか、男らしさかを尋ねている(問12)。以下は、男女別の回答で、男らしいと答えた割合が、女らしいと答えた割合より、倍以上多かったものをピックアップした(同様に、その逆も)。(  )内は、倍以上差があるものの、30%以下と低い数値のもの。

【男らしさ】
 日本の男子高校生が男らしさだと考えていること
  元気な 情熱的な 冗談のうまい 不良っぽい 責任感の強い
  頼りになる 積極的 リーダーシップのある 乱暴な

 日本の女子高校生が男らしさだと考えていること
  やさしい 情熱的な  冗談のうまい  頼りになる 
  リーダーシップのある 不良っぽい 乱暴な

【女らしさ】
 日本の男子高校生が女らしさだと考えていること
  やさしい かわいい わがまま おしゃべり おとなしい 

 日本の女子高校生が女らしさだと考えていること
  やさしい 意地の悪い かわいい 朗らか (頑張りや) 
  気が変わりやすい わがまま おしゃべり おとなしい (創造性がある)
  

 このうち、他の国とかなり違う項目について見てみよう。
 「意地の悪い」は、日本の女子は女らしさと見ているが、米国、中国、韓国は男女とも男らしい。

 「情熱的な」は、日本と韓国では男女ともに男らしさが多いが、米国男女と中国女子は女らしさ。

 「朗らか」は日本女子、米国男女、中国女子、韓国女子で、女らしさ。

 「責任感の強い」は、日本、中国、韓国の男子は男のらしさだが、米国は男女とも女らしさ。

 「頑張りや」は、日本女子、米国女子、中国女子が女のイメージと見ているが、日本女子は少なめ。韓国では男女とも男らしさがかなり多い。

 「はっきり主張する」は、日本の男女と韓国女子ではあまり差はないが、米国男子、中国男女、韓国男子は男らしさ。

 「わがまま」は、日本と中国では男女とも圧倒的に女らしさだが、他はそれほど差はない。日本女子はとくに高い。

 「頼りになる」は、日本、中国、韓国では男女とも男らしさだが、米国女子では女らしさ。米国男子の答えも女らしさの方が高い。

 「積極的」は、日本、中国、韓国男子では男らしさが多いが、他はそれほど違いはない。

 「リーダーシップのある」は、どの国でも男子は男らしいと答えているが、米国女子と中国女子は女らしいと答えている割合の方が高い。

 「創造性がある」は、日本女子、アメリカ女子、韓国女子は女らしさと答えているが、日本女子は21%と低く、アメリカ女子は62%と高い。
 アメリカ男子は女らしさと答える割合が高く、日本、中国、韓国の男子は男らしさの方が多いが、日本男子は
19%と少ない。


 いかがだろうか。女らしさ・男らしさといっても、これほど違う。アメリカの女子高校生にとって、情熱的、責任感が強い、頑張りや、頼りになる、創造性がある等は、女らしさなのである。アメリカの女子が女らしくすべきだと答える割合が高いのも納得できる。日本でも、女らしさのイメージが変われば、女子高校生も女らしさをもっと肯定的に捉えるようになるかもしれない。

  女らしさ・男らしさを 重視する八木氏や読売新聞は、そのために尽力されたらいかがだろうか。それにしても, 八木氏はちゃんとデータを調べたのだろうか。八木氏にとっては、何が「男らしさ・女らしさ」をなのだろうか。

 この調査結果の面白さは、他にも色々あるのだが、とても力が及ばない。下記のデータをご覧ください。


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 八木氏の発言 http://www.tsukurukai.com/15_web_voice/webvoice_vol08.html
 上記の調査 http://www1.odn.ne.jp/youth-study/reserch/index.html